「Deadline」experienced。

ノンフィクション – experienced

「ねえ乙、
仕事において一番大切な要素ってなんだと思う?」

自らも新卒で目覚ましい成果を挙げている甲が、
乙好みの本質論を吹っかけてきた。

「分かりやすさ。これしかない。
私はそう思ってるよ」

「ほう。それはどうして?」

「仕事で大切なことって成果を出すことだけど、
その為には社外…つまりお客様という意味でも
社内のコミュニケーションという意味でも
何かを伝えるための分かりやすさが全てだと思う」

「なるほどね。
確かにまあ、分かりにくいものは売れないし
その前に企画が通らないよね」

独りで完結する商売がこの世にない以上は。

「そうそう。
企画って考えるものじゃなくて、
通した上で実行するものだからね。
必然的に周りを巻きこなきゃいけない。
そういう意味での分かりやすさでもある」

「なるほどね。やっぱ乙の話は参考になるわ」

「…で?甲はどうなの?」

この質問はまさに乙の方が聞いてみたい。

「そうね…
私は『締め切りを守ること』かな」

「間違いない。
締切が守られないと仕事にならないよね」

「ええ。厳密に言えば、
『その場の全員が』締め切りを守るってのが大事なの」

甲がお得意の
クォーテーションマークのジェスチャーではにかんだ。

「確かに。
締切って面白いよね。
一番遅い人が終わるまで全員が終わらないという」

「ホント。
昭和の学校の連帯責任かって思うよね。
そういうのがあるから、
私は仕事で一つ意識していることがあるの」

「なによ」

「締切が守れない人とは関わらない。治らないから」

「治らない…まるで病気笑。」

「だってそうでしょ。
遅れる人っていつも決まってるのよ。
本人以外は『またアイツか』って思ってる」

乙も「遅刻は病気」論には賛成だった。

「ともかく、
仕事ってのは限られたタイミングまでに成果を出すこと。
締め切りを超えたら全てゼロになる。
そういうものだと考えるようにしてる」

「そうだね。
締め切り守れない人って、
そうなるべくしてそうなるもんね」

「うん。仕事は成果を出す場。
そのやり方がどうでもいいとは言わないけど、
成果が出ればそのやり方は正解。
出なかったら不正解。
…厳密には、成果が『出続ければ』、かしら」

無論、甲の実績は雄弁となっていた。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「Deadline。」

【追伸】
on the lineという言葉もある。
線の上…ではなく、「危うくなって」「危険にさらされて」だ。
際にはその人の本質が映る。

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