「実力とは責任」experienced。

ノンフィクション – experienced

「いいよなあ、お前は応援だけで気楽で」

応援団に向かって面と言ったら
応援団がゼロになりそうな本音を、
同世代トップの甲は乙にボヤいてくれた。

「まあね。
これは言っちゃいけないと思うんだけど、
応援するって一切の責任が発生しないからね。
それに比べて、応援される側は大変だよね」

甲と乙は同じ部活だったが、
甲が月で乙がすっぽん以下のゴミだった。

「そう。
よくさ、『期待してるよ』『頑張ってね』って
悪気なく言ってくる人多いんだけどさ、
こっちからすると責任負わされるみたいで大変。
…なんて話、応援してくれる人の前で言えるわけないじゃんか」

「まあそうだよね。
『応援することが重圧になる』なんて考えもしないもん。
むしろ、『応援すると緊張が和らぐ』と思っているぐらい」

「だから乙、俺はこうしてやってるけど
スポーツにおける一番の才能って
そのスポーツそれ自体の才能じゃなくて、
『応援を力に変える』ことだと思うよ。
これが出来る人は強い」

「でも、たまにいるじゃん?
『応援されたからいつも以上の力が出せた』みたいな」

「うん。ジュニアにも極稀にね。
そういうヤツこそが本当に強い」

口では簡単に言えるが、
実行するのはその一億倍難しい。

「自分で言うけど、同じ学校のヤツと比べたら
俺が一番強くてうまいと思ってる。
そんなのは周りも分かってると思う。
だから、それにふさわしい結果を求められる」

「そうだね」

「だって、俺が試合に勝つのと
お前が試合に勝つのとではその意味が全く違うだろ?」

乙は試合に勝ったことがなかった。

「うん。
『まあそうだよね』っていうのと、
『え!?勝ったの!?!』みたいな感じ」

「そうそう。
実力がある・才能があるっていうのが
100%幸せとは限らない…っていうのを俺はスポーツから教わった。
…誰にも言うなよ。
こんなの乙みたいなのからしたらただの嫌味だからな」

幸い、こうして活字にするまでは沈黙を貫いた。

「お前も一回めっちゃうまくなれば分かるよ。
周りはそれに見合った成果を出すことを
当然だと思うようになる。
それでこそ一流のプロ…っていう考えもあるけど、
俺にはちとキツイ考えかな」

後に、甲がプロになったという話は聞かない。

…筆者、スミカ(Rick)

「実力とは責任。」

【追伸】
「実力なんて持ったら責任が生じるから大変だ!」と
一生すっぽんのままで生き続けるのも、それはそれで人生だと思う。
私はそういう人に向けて文章を書いていないが。

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