「パラフレーズと執筆業」experienced。

ノンフィクション – experienced

「実は当初は、
パラフレーズは仕方なく身につけたスキルだったんだよ」

「あら、そうだったんですか?」

先生役の乙に対して、
生徒役の甲が意外そうなリアクションを見せる。

「パラフレーズをするってことは、
同じことをもう一回言えるってことだろ。
つまり、『尺稼ぎ』ができる。
最初の私の目的はそれだったんだ」

「あぁ、そうだったんですか!
なんかもっとこう、
高尚な目的があると思ったんですが」

「いやいや、全くだよ」

乙がここまで告白するのも意外と珍しい。

「海外留学一年目、
私が一番苦労したのは
『まとまった文字量を書くこと』だった。
英語で文字量を書くのが本当に苦手だったの」

「え、今では
毎日ブログ書いてるような乙さんがですか?」

「うん。
その分要点だけ書いて短く伝えるのは
かねてから得意だったんだけど、
それだけじゃ学術の世界で生き残れない」

これは甲も留学初期にぶち当たった壁だった。

「それで、パラフレーズですか」

「うん、同じことをいうのに
2倍の文章量を稼ぐことが出来るからね。
初期は文字量的な意味で随分助けられた。
でも、恩恵はそれだけじゃなかった」

「どんな恩恵なんですか?」

「それは…甲が一番知ってるでしょ?」

つい話に熱中しすぎて、
乙は甲に話をふるのを忘れるところだった。

「えっと…
違う視点や理論から『つまり』を考えることが出来るから、
文章・話の展開にはもってこいのスキルだよ、とか」

「そうそう」

「OREOライティングの
間に挟まる役割を担うことで、
話の流れが格段に分かりやすくなったり」

「それもある」

「色んな語彙や表現を使うようになるから、
英語のレベルもあがったり」

「それも外せないね」

甲は乙から十分な薫陶を受けていた。

「いいねぇ、教える側として嬉しいよ」

「私もこれで、文字数稼ぎ頑張ります笑」

後にこれが英語指導者のみならず
ライターとしての布石になるとは、
流石の乙も甲も読み切れていなかった。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「パラフレーズと執筆業。」

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