Future:ハワイですれ違ったあの女子大生が、一番孤高の存在だった。

孤独の留学

留学2年目の冬だった。

私がまだ同級生の日本人たちと群れに群れていた頃の話だ。

各々のテーブルに日本人グループが群れをなす大学のカフェテリアで、

颯爽と一人で行動する女性生徒の姿があった。

誠に失礼ながら、当時の私は

「え!?ぼっちで、しかも女子!?」

と隣を通り過ぎていくその後ろ姿をガン見してしまったものだ。

顔はおぼろげながらにしか確認できなかったが、

服装等見た目から考えてほぼ確実に日本人である。

だが私が当時通っていた大学に同じく通う日本人留学生なら、

わざわざ一人でカフェテリアなど来るはずがない。

寂しいに決まっているし、何よりも危ない。

だがその人は結局一人で来て、一人で食べて、一人で去っていった。

あまり大きな声では言えないが、

「アイツだいぶ変わってんなあ」

と私がいたグループでしばらく噂話のネタになったほどである。

それから数年。

「孤独の留学」を経験し、海外留学を終えようとしている頃にようやく気付かされた。

狂っていたのは私たちの方だった。

日本とせっかく物理的に離れたというのに、

留学先でも相変わらず日本人と群れてコミュニティを形成していた私たちの方が異常だったのだ。

これまで散々孤独について語ってきた上で言うが、

「寂しい」というのは自分が言うことではなく周りが勝手に判断することである。

周りが勝手に「あの人は寂しそうだな」と思っていても、

本人は微塵も寂しさを感じていないどころかむしろ充実しているかもしれないのだ。

孤独の方がメリットが大きいのに、余計なお世話なのだ。

そもそも孤独を楽しむ境地に入っている人は他者の噂話など耳に入らないが。

そしてこれは留学経験者であればあるほど首肯すると思うが、

「一人だと危ない」「複数人なら安心」というのはあまりにも安直である。

率直に申し上げて、現地民ではない顔つきで似ている人間が群がっていると

一発で「観光客か留学生の集団だな」とバレる。

観光客と留学生は両方お金持ちであり

かつ下手に警察を呼んだりするのを避けたがるというのも

現地の悪い人間には完全にバレている。

こうやってトラブルに巻き込まれる可能性が増えるのだ。

対して、現地民ではない顔つきだが一人で行動しているとどうか。

「手だれのバックパッカーか、もしかしたらここに住んでいる人かな」と思われる。

となると観光客や留学生に比べると旨みが薄いし、むしろ厳正に対処されるリスクが上がる。

こうして現地の悪い人間からは

「どうせ狙うならもっとカモを狙おう」と敬遠される。

トラブルに巻き込まれる可能性が減るのだ。

私自身の経験においてもこれは同じで、

どう贔屓目に見ても孤独の時より集団の時の方がトラブルは多かった。

留学生活後半で孤独になって以降は一気に快適になったものだ。

今回、私がこのテーマでの連載を決めたのは「彼女」が理由である。

あの時、カフェテリアで数回だけすれ違った彼女が

誰よりも早く、揺るぎない信念のもとに「孤独の留学」を貫いて

そのメリットを最大限に享受した上で強く生きていた張本人だったのだ。

この連載はそんな名も知らぬ彼女に捧げたいと思う。

 

…筆者、透佳(スミカ)

『孤独の留学』特設ページ(目次)はこちらから

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