「みんなで習い事」experienced。

ノンフィクション – experienced

とある学習塾関係者甲の告白だった。

「ぶっちゃけ、
『誰かが一緒にいないとできない』っていう人は
習い事どころか全ての勉強が向いてないよね」

「でも実際、そういう人多くありません?
誰々が行ってるから私も〜とか
誰々がやってるから私も〜、とか…」

「うん、そうだね。
だから世の中には残念な人の方が多いんじゃないかな」

「それ言っちゃいます?笑」

甲は乙の人生に定期的に登場する
『世の中の本音を教えてくれる人』の一人だった。

「だって、そもそも習い事もそうだけど
勉強って『100%自分のため』にするものだからね。
例えば『モテたいから』っていうのだって、
それは巡り巡って自分のためだろ。
本人たちは必死で否定すると思うけどね」

「そうですよね。
ただでさえ強制される勉強(義務教育)に対して
ピーピー言ってるのに、
わざわざお金を払って他人の為に勉強するのも不思議ですもんね」

授業が終わった後の教室や
たまの休日プライベートで、
甲と乙はよくこういった類の会話を交わしていた。

「うん、だから勉強は自分のためにするべき。
もちろん口では『〇〇のために〜』とか言ってもいいけど、
本音がそれだと…なんというかいただけないかな」

「今までって甲さん、
そういう生徒も見てきたんじゃないですか?」

「うん、かつての乙はまさに
『誰々が行ってるから〜』だったよね笑。
そもそも紹介で入ってきたし」

思わぬ角度から図星をつかれた。

「それはまあ…キッカケはいいんですよ、キッカケは」

「まあまあ、分かってるよ。
その後乙が自分のための勉強に
ちゃんとシフトしたことぐらい」

「いえいえ、あの節はお世話になりました」

「おう。
…で。もちろん乙の他にも、
『誰々がいるから〜』で入ってくる人って
これまでいっぱいいたんだけどね」

「ほう」

「やっぱね、ダメ。
だって、勉強のことより
その人と一緒の空間を過ごすことに幸せ感じちゃって満足しちゃうもん。
過去の乙にも覚えがあるだろ?」

恋愛沙汰のことだったら何も言い返せない。

「もちろん足の引っ張りあいとか
意地とか見栄とか嫉妬とか…色々あるんだけど、
やっぱ本質的には原因は一つだよ」

「何ですか?」

「手段と目的の逆転」

この『みんなで習い事』は、
「自らのスキルアップ」「自己実現」という当初の目的と比べると
一つの倒錯と感じられてならないのである。

最も、甲は最後にこう付け足しているが。

「もちろん、
『友達作りたい!』『一緒にいたい!』
というそれ自体が目的なら俺は止めないけどね。
ただ成果は格段に出にくいよ、ってだけ」

 

…筆者、スミカ(Rick)

「みんなで習い事。」

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