「あの記事、見たよ。
確かにその通りだとは思うけど、
ああいう記事こそ例文が欲しいよね笑。」
乙の友人甲はこう
半分冗談めかして言った。
「あの『気づき – ki du ki』っていう連載は、
出来るだけ圧縮・濃縮を意識してたんだよ。
本質だけを詰め込んだような記事だった。
おかげで誰かには『固定観念の塊』って言われちゃったけどね」
「分かる笑。あれは正直誤解ばかり招く連載だったよね」
乙のブログについて
対等に語り合える存在は中々珍しかった。
「で?教えてよ」
甲が話を本題に戻す。
「いいよ、じゃあ私が
これまで見てきた映画の中で唯一
一語一句完璧に覚えているフレーズを使おうか」
「ほう」
「それが
『They believe whatever they want.』
っていうセリフなんだけど」
「あら、意外とシンプルなんだね」
甲はそう言って一口コーヒーをすする。
「その映画だと、
皆のヒーローだと思われてた人が実は悪いやつで、
本当のヒーローである主人公にやられるときに
このセリフを吐き捨てるんだけどね」
その映画は日本でもそこそこのヒットを記録していた。
「文法的に言えば、
whatever…『〜するものは何でも』とか
『どんなことが〜でも』とかになるから」
「『彼らは彼らが信じたいものなら何でも信じる』
あたりが直訳か」
甲も英語への造詣は深い。
「うん、その通り。
たださ…長くない?それ。」
「だよね。
だって、英語だとたったの5単語だよ。
なんかそういう『洗練さ』がほしい」
「うん、そこで私はこう訳してみることにした」
乙がタイピングの手を進める。
「『人は、信じたいものを信じる』」
「あぁ、いいねえ。much better」
「ほんとそれ甲口癖だよね笑」
甲の反応は上々のようだ。
「それ。
theyの意味もその場その場で変わるし、
なんならwhateverなんてそんな深い意味で使われてないしねえ」
「ホントそれ」
「『人間は、信じたいと思ったものを信じる』
とかだとちょっと哲学めいた訳になるかな」
「お、それもいいじゃん」
最後に甲はこう付け加えてくれた。
「誰が観るか、っていうのもそうだし
その物語の中にも特有の世界があるからね。
どうせ正解は一つじゃないんだよ。
こう言ってみると、当分AIには取って代わられなさそうだね笑」
甲に言いたかったことを
洗いざらい言われたようで、
乙はちょっぴり妬いた。
…筆者、スミカ(Rick)
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