「揚げ足取り屋さんの本質」experienced。

ノンフィクション – experienced

「日本に帰ってきて働き始めてから
少し経つけど、改めて気付いたことがあってさ」

「ほう、何?」

いつものコーヒー片手に
顔を合わせる甲と乙。

「ほんとに、
おしゃべりな人ってこの世に多いんだね」

「そうだね、
じゃあ俺らも帰ろうか笑。お疲れ笑」

まさに今がおしゃべりじゃないか…
という野暮天なツッコミはお互いにしない。

「まあまあ、それは冗談として
それは乙が留学してたアメリカもそうじゃないの?」

「いやまあそうなんだけど、
アメリカのおしゃべりと日本のおしゃべりとでは
一つ決定的な違いがあるんだよね」

「なるほど。何それ」

今日の甲は珍しく
コーヒーにフレッシュを入れていた。

「アメリカのおしゃべりは話の内容が面白いんだけど、
日本のおしゃべりはただひたすらに話がつまらない」

「ほう、どうしてよ」

「アメリカ人って関西人にある種通ずるものがあって、
常に『人を楽しませよう』っていう意識があるんだけど、
日本人はそれがまるでない。
ただの自己満足でくっちゃべってるだけ。もちろん例外もあるけどね」

「まあ確かにね。
話がつまらないヤツに限って自分が話好きだよね」

「しーっ!」

あの乙がたまに慌てるぐらい
甲も本音に生きる人間である。

「私はアメリカ留学の後遺症(?)の一つとして
話がつまらない人にはつい
『つまらない癖に口開けるんじゃねえ』って
思っちゃうから、まあ人のことは言えないね笑」

「大丈夫、それは日本人でも
本音では全員そう思ってるから笑」

カフェの中がガラガラでよかった。

「話のネタがなくても
話していないと死んじゃうような人が
じゃあ何を話すかって、
そりゃもう悪口・愚痴・噂話のオンパレード」

「It sucks」

「それ以外の話題ないのかよとは俺も思う」

乙は時折
突然英語が口から出てくるくせがあった。

「あでそうそう、
かの『タルムード』にはこんな一節があるらしいね」

「どんなよ」

「『よく考える人は喋る暇がなくて、
よく喋る人は考える暇がない』」

やはり甲は面白い。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「揚げ足取り屋さんの本質。」

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