学士論文執筆の調査・取材の一環として、
乙は自らが所属していた大学に存在する
大学付属の英語学校を取材したことがあった。
その中で、論文執筆という意味ではお蔵入りになったが
実はパナマ出身の学生・甲とインタビューを行っていた。
「パナマ出身のあなたが、
またどうしてミシシッピまで来て
こうして英語を学んでいるんですか?」
こう尋ねた乙に対し、
当時、英語学校の一生徒だった甲はこう口を開いた。
「パナマは、貿易と観光で持っている国です。
だからこそ特に、英語がないと仕事に就けないんです」
確かに、例えばかのパナマ運河は
航海の一大拠点として名高い。
「金融業は強いけど国内通貨が米ドルだったり、
貿易・観光だと結局は英語が共通言語になったり、
後は高等教育になると国外に行った方がよかったりと、
伝統的に『そんな強くない』国なんですよ」
まるで日本である。
「それで、やはり英語が必要だと?」
「ええ。パナマの第一言語はスペイン語ですから、
例えばこの周辺…メキシコなどに行く分には良いんですが、
やはりビジネスであったり国外留学となると英語は不可欠なんです」
「なるほど…。
国内がスペイン語ばかりとなると、
そこで英語を勉強するのは少し辛いでしょうね」
ここでもESLとEFLの違いに話が及んだ。
「ええ。とはいえパナマ国内にいては
やはりスペイン語で暮らせてしまうので、危機感はない。
そこで国外の英語学校を色々と探して、
気候が似ていてかつ割安だったのがここだったんです」
確かに、高温多湿のパナマ出身者が
北米に行こうものなら大変な目にあう。
「私が一つ思うのは、
この『スペイン語でも十分に暮らせる』っていうところなんです。
乙さんは日本出身だそうですが、やはり日本でもそうですよね?」
「ええ。日本にいるなら基本日本語以外は不要ですからね。
せいぜい『あるならあった方がいい』レベルです。
ここ(ミシシッピ)みたいに、『ないとダメ』では決してないですから」
「そうなんです。
将来の可能性を本気で広げようと思ったら、
私達はこうして国外に留学するのが最善なんです」
陽気でおっとりした国民性と聞いていたが、
しっかりとした一面もちゃんとあるようだ。
「母国語だけでも今は苦労しないのですが、
いずれパナマでは英語がないと職がなくなります。
今はそれに備えてこうして勉強しているんです」
「なるほど、そういった目的なんですね」
「今、こうして話している英語も勉強中です笑」
ちょっとたどたどしい英語で、甲は笑顔で応えてくれた。
…筆者、スミカ(Rick)
【追伸】
究極、英語学習には二つの要素しかいらない。
それは危機感であり、また必要性である。
これらのない英語学習はただの娯楽。
コメント