「基本的に、
自分たちの方からアピールする『ナンバーワン』は
全部偽物だと思って間違いない」
「そうだよね。
そもそもナンバーワンって
自分で名乗るものじゃなくて
他者からそう勝手に認められるものだし」
甲はマーケティング会社で勤務していた。
「そういえば先日、
ウチのとあるお客さんが
『弊社の商品がネットランキング一位になったぞ!!』
って騒いでたからそれを見てみたんだけどさ」
「うん」
「そのランキング、
商品の母数が全部で3つとかだったんだよね」
「ひえ…」
「それでその人が
『1位は1位や!
「商品ランキング堂々1位」って書くで!』
って言ってきたから全力で止めた」
「ナイス甲笑。
でも、そういうのってよく調べないで
すぐに信じちゃう人案外多いよね」
何も商売に限った話ではないが。
「そうだね。例えばだけど、
どれだけサクラを使おうが
どれだけ身内でレビューとか書かせようが
どれだけ見えないところでお金の動きがあろうが
1位は1位だからね。
…乙の世界でもそういうの、ない?」
「そうだね、これを言ったら消されるかもしれないけど
『お金を払っていただければ、レビューの星上げますよ』
って連絡をよこしてくるのは一つや二つじゃない」
「やっぱりね…
ホントにランキングってそういうのばっかだよね。
食べログとかも結局はお金らしいし、
汚いんじゃなくてもうそういうものなんだろうね」
それだけ人は「1位」に弱いのだ。
「いや、それは甲が正しいと思うよ。
汚い。限りなく汚いと思う。
それを汚いって思わないその業界も汚い。
自分らがやっていることが
悪いって思わなくなるのがカウントダウンだよ」
「…そうだね。
マーケティングで人を騙すことは絶対にあってはならない。
この業界だとそれを『演出』って言う人もいるんだけど、
僕はそれを心の底から軽蔑している」
「『演出』って…
ホント、何やってもいいと思ってるのかね」
「偽装ではなく誤表記です」とかやっていた頃から
人はまるで成長していない。
「思ってるんじゃない?『勝てば官軍』とか言って。
まあ正確には『勝ち続ければ官軍』なのであって、
そういうので勝ち続けるのは不可能なんだけどね」
甲のこの名言を全人類に煎じて飲ませたい。
…筆者、スミカ(Rick)
【追伸】
世界史の勉強で
「中世ってホントのことを言うと殺されるなんてヤバいな…」
と言っていた人がいた。
だが、本当にヤバいのはどちらだろうか。
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