W.A. #20『英語は英語で勉強するべき?それとも日本語?』

Word. Answer.

いわゆる英語教育の本やブログ等を見ていると、
「英語は英語で勉強するべきだ」と
「英語は日本語で勉強するべきだ」という
相反する2通りの考え方が存在しているように思えます。
スミカさんは先生・生徒双方の立場から
この両方を経験されてきたことだと思いますが、
どちらのアプローチが正しいのでしょうか。
やはり英語は英語で、なのでしょうか?

(北海道・学生・Mさん・女性・22歳)

結論から言うと、両方必要です。

もちろん、理想は
ベース作りの初期段階から英語で勉強して
「英語脳」を作っておくことなのですが、
現実にはなかなかこうはいきません。

例えば、語彙やフォニックスといったド基礎から
グラグラになっている日本人の生徒に
いきなり英語を英語で教えようとしてもムダです。

で、つまり日本語では何を言っているの?
になります。

私がこれまで指導してきた生徒の大半も、
率直に申し上げてこのレベルでした。

かくいう私自身も
英語脳を確立出来たかな?というのは
留学生として渡米した後の話なので、
この「周回遅れ組」の気持ちは良く分かります。

まだ、どれだけ英語力を向上させたところで
人格のベースにあるのは他ならぬ母国語です。

つまり日本語です。

私の教育・指導指針の一つに、
かつて在籍していたハワイ短大の元校長に
お教えいただいた以下の考えがあります。

『いかに非ネイティブが英語を勉強しても、
ネイティブに限りなく近い存在にはなれるが
ネイティブそれ自体には決してなれない

これは決してマイナスではありません。

むしろプラス要素です。

日本語的発想も英語的発想も両方出来て、
かつ伝達手段としての言語に一切の不自由がない
というのが真に日本人が目指すべき
Global Citizenの姿ではないでしょうか。

話を本題に戻しましょう。

英語か日本語か、についてですが
インプット(Listening & Reading)は
「英語で」完結させることを目指すべきです。

理由は単純です。

英語を聴く際や読む際、
いちいち和訳して理解しようとすると
その分要する労力が跳ね上がります。

これを職業としてやっているのが翻訳・通訳です。

異言語間で彼ら通訳をはさんだ
インタビュー動画を見れば分かりますが、
通訳を通す分ゲストが話せる量は半分になりますが、
かかる労力は単純計算で2倍になります。

これは大変です。

Mさんはじめ、このブログの主な読者層である
若い世代の英語学習者がこれをやると、
英語が一発で大嫌いになれます。

英文を読む際も、仮にMさんが
留学レベルやビジネスレベルでの英語を考えるなら
逐一和訳なんてしていたら脳がパンクします。

なので、ことインプットに関しては
極力間に日本語を挟まずに
英語を英語のままで理解することです。

幸い、リスニングと長文読解に関しては
ほぼ英語のみでも純ジャパに分かりやすい
解説が載っている教材は豊富にあるので、
そちらに優先的に取り組むべきです。

  • 「英語で」英文法を解説する参考書
  • 「英語で」リスニング力を鍛える参考書

語彙はもう頭に叩き込むしかありません。

さて、こうはいかないのが
アウトプット(Speaking & Writing)です。

これは
日本語から考え始める
という視点が必要です。

  1. 発信したいことを「日本語で」考える
  2. 1の内容を「英語に移し替える」

私自身がこのスタンスです。

なぜ発信内容を英語で考えないかといえば、
常日頃そんなことはやっていないからです。

  • 「今日は何を食べようかな」
  • 「私は○○だと思う、何故なら…」
  • 「今日はこうだった、明日はどうしよう」

例えば、Mさんが日頃からこれらを
「頭の中から無意識に英語で」考えている場合は、
わざわざ日本語から始める必要はありません。

ですが、私の知る限り
非ネイティブでその領域に至っている人は
ゼロではありませんが相当稀です。

ならば、
自分から発信するアウトプットは
日本語スタートでいいよね、というのが私の考えです。

もちろん、
「日本語(英語)にしかない表現」
「日本語(英語)だと不自然な表現」
等々のギャップはクリアせねばなりませんし、
最終的には英語でアウトプットをします。

そして、英語で表現する際には
ネイティブ流の発音や構文構成等を
身に着けておくことも忘れてはなりません。

ですが、自らの考えを発信する際
「英語で伝えること」はあくまでも手段であって、

それ自体が目的ではありません。

手段と目的を取り違えてはなりません。

例えば私が英文を書く際は、

  1. 「日本語で」書きたい内容を思い浮かべる
  2. 「英語なら」こういう書き方をするよな…と考える
  3. 実際に英文にして出力する

この三段階を踏んでいます。

話す際も基本的には同様です。

大切なのは、
「日本語でのロジック」と
「英語でのロジック」を比較して
どちらがより精度の高いアウトプットが出来るか
ということです。

大半の日本人は、
日本語でのロジックの方が上です。

なので、英語で学ぶことも重要ですが
その根底にあるのは日本語での教養です。

まとめますと、

  • Listening & Reading…極力英語のみで勉強する
  • Speaking & Writing…より思考力が強い言語をベースに勉強する

こうなりますね。

 

回答、スミカ(Rick)

【追伸】
私がチューターとして勤めていた際も、
エッセイの書き方指導や添削においては
(日本人には)日本語をホイホイ使っていました。
その方が理解が深まるからです。
ですが、「和文英訳」はさせても
「英文和訳」は決してさせませんでした。
ぜひ、ここから色々読み取ってください。

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