『面接の達人』という本がある。
私がここでわざわざ紹介するまでもない、就職活動ノウハウ本の超・ベストセラーである。
ここではその本の中の「作文」の項目で紹介されている戦法を紹介したい。
それはラスト3行を除き、どんなテーマが出されようが同じ文章を書くというものだ。
「日本経済のこれから」というテーマだろうが
「日本の英語教育の課題点」というテーマだろうが
「最近あった○○というニュースに対する意見」というテーマだろうが全て同じだ。
「日本経済と聞いて思い出すのは、やはりミシシッピの土地柄のことです」
「日本の英語教育と聞いて真っ先に浮かんだのは、ミシシッピの土地柄のことです」
「○○のニュースについて話す以上、ミシシッピの土地柄について話さないわけにはいかない」
と冒頭・1行目で書き切ってしまう。
2文章目からラスト3行に至るまでは、全社共通で予め考えておいた文章を
その場で出されたテーマ・キーワードを一切使わずにコピペで書く。
そしてラスト3行目で、
「ミシシッピの土地柄を通して、日本経済のこれからを見通すことができます」
「ミシシッピの土地柄には、実は日本の英語教育の問題点の解決策があります」
「ミシシッピの土地柄という客観的な視点から○○を見ると…」
と無理矢理テーマと結びつけて結論づけるのである。
この戦法だと良いことが少なくとも3つある。
まずは絶対に他人と被らないことだ。
どうせ作文問題なんて95%の人が同じような対策をして、同じような文章を書く。
つまり95%は「その他大勢」として記憶に残らないボツだということだ。
形はどうあれ読んだ人の記憶に残れば採用される可能性があるが、
そもそも一人の応募者として覚えてもらわなければその可能性はゼロになる。
覚えてもらえないということは、この世に存在しないのと同じだからだ。
この世に存在しない人が「あなた採用!」と言われることだけは断じてない。
そこで最初から根本的に土俵をズラしてしまえば、覚えてもらえる可能性がある。
最後はしっかりテーマと結びつけているわけだから、ふざけている訳でもない。
むしろ「よくここからこの結論にまで持ってこれたな」と思わせることができる。
そして絶対に時間切れしない。
わざわざ頭を下げて就職する必要がないレベルの文豪を除き、
テーマがパッと出されたその場で名文を考えついてかつ最後まで書き切るのは至難の業だ。
下手したら頭の中で考えているだけでタイムアップしてしまう。
だが中心部分、割合にして8〜9割の文を予め全て用意してしまえば
ラスト3行までを超高速で書き切った上で
「さて、どういう風にオチをつけようかな」
と楽しんで考えながら余裕綽々で残り時間を使うことができる。
最後にこれが無視できないのだが、作文対策にかける手間が大幅に短縮される。
95%の人は会社調査・業界調査・最近のニュースや流行等々をくまなく調べた上で
「こう聞かれたらこう答えよう」
というのを各社ごとバラバラにシミュレーションしてしまう。
しかし、就活なんてどんなに絞っても最低10社は巡るのだから
その度に作文が出されでもしたらそれだけで準備が大変なことになってしまう。
だが基本文章を一つだけ携えてそれを全ての会社で使うようにすれば、
作文前の準備としてはそれで完了だ。
浮いた時間を自己分析・業界調査・面接練習等々に存分に使うことができる。
最後に私自身の告白をしておくと、これまでの就活・転職活動で実際にこの戦法を使ってきた。
なんのことはない、私が私淑している師匠が
「どんな作文だろうが『筋力トレーニングにおける筋肉の成長過程』について書く」
という戦法を紹介していたからその真似をしただけだ。
どんな固いテーマが出されようが、どんな専門的なテーマが出されようが
「このテーマを話す以上、やはり筋トレにおける筋肉の成長過程について触れないわけにはいかない」
で全て突き通した。
その結果、今ここにいる。
…筆者、透佳(スミカ)
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