稀に採用面接で「変わった質問」をされることがある。
「あなたを動物に例えるとなんですか」
「色でいうと、あなたは何色ですか」
「無人島に一つだけ持っていくとしたら何を持っていきますか」
一見すると採用活動とはまるで関係なさそうな質問ばかりだ。
「面接マニュアルに載っていないような質問をして、その人の対応力を見たい」
というのはあくまでも模範解答であり建前だ。
そんな奇をてらった質問をしなくても、対応力なんていくらでも測ることができるからだ。
では本当は何のためにこんな「変わった質問」をするのだろうか。
以前、某大手企業の採用面接担当からこんな話を聞いたことがあるのだが
この手の質問は実は「落とす」ために存在する。
彼曰く、コミュニケーションを取ろうとする態度さえ示してくれば
返答の内容は正直どうでもいいという。
(返答の内容も吟味していたら、日頃から面白いことを言うことを考えている芸人タイプの人が有利になってしまう)
では何を見ているのかと言えば、面接が終わった後だ。
今はSNS全盛期だ。
何かあればすぐにつぶやくのが今の若者世代である。
特に留学生の場合は留学するにあたって
何かしらのSNSアカウントを新しく開設することが多いから尚更だ。
そこで、
「今日の採用面接でこんなことを聞かれたw」
「○○業界のとある企業はこんな質問をしてくる」
とSNSで書き込む人を特定して選考から外すのが真の目的である。
(ちなみにこれをやるためには、全国でその会社しか聞かないような
「これは流石に変すぎる」という質問を人数分バラバラに用意しておくと
つぶやいた人間を合言葉のように100%特定できるから便利だ)
そういう人は入社すると、顧客の個人情報や企業秘密といった
よそに流してはいけない情報をネットに流してしまう可能性があるからだ。
個人情報が漏れると、当然その会社の信用問題に発展する。
企業秘密が漏れると、その会社の優位性・立ち位置が崩れかねない。
その採用担当の人が付け足してくれたのは(彼は人事部だ)、
こういうのはもう性格で決まっていて
入社後研修で矯正しようと思ってももう無理だから
そういう人間は最初から採用しないのだと決めているのだそうだ。
「問題を起こしそうな人」を頑張って教育するのではなく、
最初から「起こしそうにない人」だけを採用するのが狙いだ。
採用担当者をあまりなめない方がいい。
彼らはこれが仕事であり、
変な人間を通してしまうと自らの評価や進退に関わるからだ。
ちなみにこういうことは大企業であればあるほどやってくる可能性が高い。
そういうことに人員を割ける余裕があるのはそれだけ大きな企業だからだ。
(就活生のSNSを調べるなんてことは暇な人間がいなければできない)
海外留学においてもこれは無関係ではない。
留学生なら誰でも知っているであろう就活イベントに
毎年11月にボストンで行われるボストンキャリアフォーラム(通称ボスキャリ)がある。
そこに出展していた某IT系企業の採用担当者は、
「自らもその会社の広報としてSNSを活用する」という建前のもと
Twitterで「ボスキャリ」と呟いたアカウントに一通り目を通していた。
もっとも、先程の彼と違う点としてその担当者は
「落とす」ためだけではなく「見つける・見出す」ためにもSNSを活用していたのだが。
これはよく言われる話だが、SNSは匿名ではない。
本気でその気になれば、こうやって一瞬で個人が割れるようになっている。
SNSに載せたりして他人と共有したい・騒ぎたい気持ちは分からないでもないが、
普通に安定した平凡な暮らしを送りたいのであれば
せめて入社して試用期間が終わる頃ぐらいまでは大人しくしておくことをおすすめする。
孤独を貫いていれば最初からこんな心配をする必要はないが。
…筆者、透佳(スミカ)
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