乙は珍しく甲に(さりげなく)直談判していた。
「『購入(=キャッシュポイント)こそが正義』
みたいな風潮、どうにかなりません?」
乙は社内が
「キャッシュポイントをもたらすセールス」と
「その他大勢」に分断されている気がしてならなかった。
どこか不満げな乙を前に、
甲の答えはまたしても明確だった。
「そもそも、本質的には
お金を払ったポイント=キャッシュポイントじゃないからね」
模範解答を完全に外した回答に、
乙は目を大きくして首をかしげた。
「キャッシュポイントっていうのは、
要は『利益が発生するタイミング』ってことでしょ」
乙は静かにうなずく。
「そりゃあ、売る側にとっては
売ったタイミング=利益かもしれないけど、
じゃあ買う側にとってはどうなの?」
優しく、しかし鋭い目で
乙の目を真っ直ぐ見つめる甲に対し、
乙は珍しく他人と目線を合わせた。
「その…その商品とかを実際に使って、
そこで結果が出た・利益が出たってところですよね」
「そう。
買う側からすれば、買った商品を使って
成果が出て、そこで初めて『利益』なの」
乙はいつもの如く静かに感嘆を吐いた。
「『利益が出た』と買う側が思うまでは、
僕らが便宜上『売上』として記録しているのは
本質的には『預り金』でしかないからね」
この世の全てのセールスパーソンに
心で理解してほしい金言だった。
…筆者、スミカ(Rick)
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