「『読者』という職業はない」experienced。

ノンフィクション – experienced

「俺さ、『本を読む』っていう動作が
あんまり好きじゃないんだよね。
大事なのは分かっているんだけどさ」

作家志望の乙に対し、
活字が嫌いな甲は正直にそう告白してくれた。

「だから、乙とかはないけど
他のライターって名乗る人から
『記事書いたよ!よかったら読んでね!』って
一方的にLINEとか送りつけられてくるんだけど…まあ読まないよね」

「まあ、どんな事情があろうとも
一方的に押し付けるのは論外だよね」

「それもそうだし…なんか文字を読むってさ、
読書の場合は千数百円取られるし
それを読むために何十分・何時間もとられて
しかも読むという行為『それ自体』は何も産まないだろ」

「まあ確かにね。
知識として吸収する『だけ』ってならまだしろ
なにかしら行動を起こさないとだもんね」

「そういうのを考えると…動画でいいやって考えちゃう」

甲の気持ちは大いに理解できる。

「しかも、文章を読む場合は
『自分で意味を理解する』っていうワンステップがある。
動画とかSNSならそういうのはないからね。面白いし」

「そうね。お手軽なんだよね。
気軽に見れて分かりやすいし、
発信者がちゃんと咀嚼してくれるから
そりゃあみんな動画見るよね、って話」

そういうのがいけない、とは流石に言えなかった。

「ほら乙さ、まあ当たり前だけど
動画を見たり本を読んだりってのは
基本的に趣味というか、娯楽の範疇じゃんか」

「そうだね」

「だから基本…なんというか、
そういう『お勉強的な集中力』はあまり使いたくない。
そう考える人は多いと思う」

「ほう」

読書家には一切分からない気持ちだろうが、
あいにくこの世には読書家ではない人間の方が多い。

「だから、とにかく面倒くさいのは抜きで
とにかくパッと分かりやすくしてほしい。
そうしたら本のみならず、大抵のものは売れるでしょ」

これも一つの時流だろうか。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「『読者』という職業はない。」

【追伸】
ビジネスで一番大切なのは分かりやすさ、とも言う。
そう考えればこれも必然の流れだろうか。

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