「英語教育の業界って
いわば『流行の学習方法』みたいなのが
数年ごとにトレンドであるんだけど、
それが近頃はシャドーイングなのかなって思ってる」
同業(といっても学習塾だが)の甲が
乙にこういう話をしてくれた。
「そうだよね。
ほんの5年前なんかだと、確か
シャドーイングなんて随分マニアックな勉強法だったよね。
少なくとも受験英語においては完全に不要だし」
「そうね。
元々は翻訳養成の訓練の一つだったことを考えると、
『プロもやってる!』みたいな訴求で
マーケティングの餌食になるのも
時間の問題だったんじゃないかしら」
「プロ仕様」「プロも推薦」というのが
権威を持つのはどの業界も変わらない。
「でもさ、甲はどうして
シャドーイングがここまで有名になったと思う?」
「うーんとね…
ここ数年で新しく出てきたような
いわゆる『コーチング系英会話教室』が
こぞってやりだしたのも一理あるんじゃない?
乙、その辺は心当たりあるでしょ」
「まぁ、そうだね…。
特に『短期間』とか『効果が出る』とかを考えたとき
シャドーイングって便利な学習法だからね。
例えるならハードなウェイトトレーニングみたいなもん」
「あら、筋トレで例えるのね」
「そうだね。
正しいフォームや目的を持ってやらないと
効果が出ないどころかかえって逆効果になって
その後のトレーニングに悪影響を及ぼす…
っていうのはまさにシャドーイングじゃないかな」
筋トレと英会話学習はどこか通じている。
「言われてみれば確かにそうだね。
まず、『聞こえてきた音声をその場で直ぐに口に出す』なんて
相当音声に慣れていないとできないことだし、
そもそも何の目的があってやるのって話」
「甲はさ、
自分の生徒にシャドーイング薦めたりするの?」
最も、甲の生徒の大半は学生だが。
「そうね。
『英会話も出来るようになりたいです!』って言ってきて、
かつ受験英語がかなりのレベルに達している子には
発展編のアクティビティとしてやったりもする。
まあ、やり方は徹底的に仕込むけどね」
「ほう、どんなよ」
「コピーすること、つまり
独自の解釈でイントネーションを変えたりしないこと。
息遣いを真似ようってのが一つあるのに
それに寄せなかったら意味がないじゃない」
ごもっともである。
「だよね。
そのとおりに繰り返す、ってヤツなのに
全然違うアクセントでやってる人がいる」
「まあ、無理もないけどね。
ネイティブの声を聴きながらしかも真似しろなんて
それこそプロ養成でもないとしない手法よ。
プロ以外は一切やらないのも一理あるわ」
乙のシャドーイング理論も
この甲の意見にこれに沿っている。
…筆者、スミカ(Rick)
【追伸】
一昔前の「聞き流すだけ」よろしく、
「聞いて真似するだけで英語が話せる」
なんて類の教材が生まれてきてももうおかしくはあるまい。
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