人事部、といえば
人間洞察のスペシャリストを想像するだろう。
社会人一年目のピュアな乙は
少なくとも人事はそうだろう、と確信していた。
「いやあ、別に人に言うほどの趣味はないですね」
こうさらりと言った乙に対して
田舎で人事業務を担当していた友人甲の台詞に
乙はしばし耳を疑うことになる。
「もっと趣味を持って、友達を作ろうか」
この全ての台詞がおかしすぎて、
逆に乙にとっては新鮮に感じた。
流石に面と向かって
直接あなたはバカですかとは言えない。
もしかしたら自分の方が
おかしいのかな、と思って
乙は自らの恩師にこの件を話してみた。
「…ということがあったんですけど」
恩師の開口一閃。
「ほら、世の中にはそういう末人もいるから」
乙は黙って聴き続ける。
「『人に言うほどの趣味がない=孤独』
というのも分からないし、
『孤独=寂しい』というのはより理解不能だね」
「そうですよね」
「なによりも」
恩師が静かにこう呟いた。
「趣味は自分のためにやろう。
自分が楽しいからそれが趣味になる。
それで仲間が出来るっていうのは『ついで』。
それを目的にするのは趣味じゃなくて活動って言う」
「仰る通りですね」
ちなみに乙は
甲に今一度その台詞の真意を
(超丁寧に)尋ねてみたことがある。
「やっぱり、趣味がないと寂しいもんですかね」
甲は当たり前だろ、という笑顔でこう教えてくれた。
「趣味は人と繋がるためにやるものだからね」
それ以来、乙は
甲の全ての言動を話半分で聞き流すようになる。
…筆者、スミカ(Rick)
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