「短期留学って、実は」experienced。

ノンフィクション – experienced

「留学斡旋だって商売なんで、
どこかで利益を出さないといかんのです」

この業界に携わって数年の
硬派スタッフ甲はそう告白してくれた。

「ですよね笑。
国の機関とかでもない限りは、
慈善団体じゃないですからね」

自らも留学生であった乙は、
一通りの事情には目を通していた。

「そのことを考えると、
出来るだけ都会の私立大学に
正規じゃなくて、短期留学や研修・体験で送り込むのが
利益率的には一番高いんですよ」

「まあそうですよね。
その方が皆行きたがりますし、
短期コース・特別コースが率的には一番お高いのは
別に留学だけに限った話でもないですし」

「そう、そこが大事なんです」

甲が少し声の圧を上げる。

「留学って一大決断ですから。
何十万、何百万とまとまった時間がかかる。
だからこそ少しでも『行きづらさ』を感じさせちゃダメ。
『行きづらい』と感じた瞬間に売れなくなる。
『短期で』『お手軽に』が流行るのもしょうがないんです」

「そうしないと買わないですもんね」

「もちろん、留学斡旋会社の中には
出来るだけ田舎で、公立で、お安く…
というところもあります。
ただ、大抵そういうところって
国の機関かすぐ潰れちゃうかのどっちかですけどね」

乙も目を見開いて相槌を打つ。

「ですけどね」

甲が気持ち目線を地面に移す。

「やっぱり、本当は
海外留学って長期じゃないとダメです。
旅行じゃないんですから」

「どうしても旅行気分になっちゃいますよね」

「最初から旅行気分の人はいいとして、
『本当に現地の人と混じって本気で勉強したいんです!』
という人には短期留学はなるべく勧めないようにしています」

この人はかなり誠実な方だな、と乙は直感した。

現地にいる時、
『次は〇〇へ行かなきゃ!』って
思っているうちは全部観光です。
そういうのが抜けて、
日常を味わえるようになってこそ留学ですよ

「本当ですよね」

留学って、お手軽じゃないんです。
だからこそ価値があるんです。
そこが分かってない人はやっぱダメです

甲の本音をありがたくかみしめる乙であった。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「短期留学って、実は。」

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