System:塾を「最高の環境」にすると、成績が伸びなくなる。

親御さんには絶対に教えない学習塾のホンネ

誤読してもらいたくないが、

最高の環境下では伸びるのではなく、伸びなくなるのだ。

環境が良いのに成績が上がらないとはどういうことか、

と思われるかもしれないが

その原理を今から説明しよう。

私は以前英会話教室に勤めていたのだが、

英会話教室には一つの「法則」があった。

それが続きやすいと続かないというものだった。

当たり前だが、英会話教室は継続的に・毎週コンスタントに通ってもらう必要がある。

「前回の授業から1ヶ月振りですね」

「あれ?これまで何をやってましたっけ」ではお話にならない。

短期間での習得を目指す短期集中型・コーチング型なら尚更だ。

そこで英会話教室は、

「いつでもレッスンの予約がとれます」

「いつでも講師やスタッフへの質問を受け付けます」

「ご自宅でも、オンラインでも受講できます」

と、実際にレッスンを受けるための障害・ハードルをとことん取り除こうとする。

もちろん受講率を上げるのが狙いだ。

その結果どうなったか。

受講率が下がるのである。

受講率が下がる訳だから、当然継続率も下がった。

当時の私は経営の裏方という仕事柄、もちろん即座に原因を分析した。

その結果判明したのは、

あまりに気軽に受けられてしまうと、レッスンのありがたみがなくなる

ということだった。

英会話がこの世で一番大事、という人はともかく

大半の人は日常の生活がある中の一つとして英会話を学んでいる。

「この時間は買い物をして…」

「この時間は読書をして…」

「この時間は子供の迎えに行って…」

など、それぞれのスケジュールがある。

概して、それらは全て時間が固定されている上に生活上不可欠だ。

それに比べると、

「いつでもいい」

「ないと今生きていけない、というほどではない」

という英会話のレッスンはどうしても後回しになってしまう。

24時間営業のコンビニと同じで、

どうせいつでも開いているのだからいつか行けばいいだろう

レッスンなんていつでもできるから後回し

という心理が働くのだ。

こうやって足が遠のいていく。

もちろん便利さは必要だ。

せっかく予約しようとしているのに使いづらい・予約できないでは意味がない。

だが、現場で私が感じていたのは

あまりにも便利すぎると、人はそれに甘えて怠惰になる

という事実だった。

さて、学習塾の話だった。

分かりやすい授業はもちろん大切だ。

学習環境を整えることも大切だ。

適切な情報・アドバイスを選んで与えることも大切だ。

だがその上で、塾講師として肌で感じてきたのは

こちらからあまりに与えすぎると定着が悪くなるということだ。

こちらから与えすぎると、生徒の依存性が高まる。

依存性が高まると、

生徒は「自ら学ぼう」ではなく「相手からもらおう」という姿勢が強くなる。

この「もらおう」という姿勢が学習の大敵なのだ。

分かりやすい授業をしたところで、

「納得できません」

「もっと分かりやすく説明してください」とふんぞりかえり始める。

学習環境を整えたところで、

「でもそもそも塾に定期的に通うのが…」

「来ているだけで偉い」とふんぞりかえり始める。

適切な情報・アドバイスを与えたところで、

「そんなのは分かっています」

「そういうのじゃなくて、もっとすぐにパッと役立つやつをください」

とふんぞりかえり始める。

ふんぞりかえると、感謝の心がなくなる。

感謝の心がなくなるということは、

教えてもらった・与えてもらったことのありがたみが分からないということだから

そんなものが定着したりうまく活用できたりするはずがない。

最高の環境を生徒に与えてどうなったかと言えば、

よほど感謝の持続力が強い・深い子を除き

それに依存してどんどん怠惰になっていったのだ。

感謝の強い子は与えられた環境に感謝してやるべきことをやっていたが、

感謝の弱い子は与えられた環境が当たり前だと思ってふんぞりかえっていた。

これは全て、感謝もしない(できない)子に与えすぎたことが原因なのだ。

これは塾に通う上である意味一番大事な心構えだが、

「塾に通わせていただいてありがたい」と思わない・思えない子を塾に通わせてはいけない。

そんな子を塾に通わせても、効果が極めて薄いどころか

「もっともっと」とどんどんつけ上がってしまう。

それはお金をドブに捨てるどころか、

そのドブの水が顔に跳ね返ってくるようなものである。

つまるところ、

学習塾は「最高の環境」ではなく「まあ良いかな」ぐらいでちょうど良い。

「まあ良いかな」ぐらいにしておくと、

残りの部分は生徒自ら埋め合わせようと考えるようになる上に

現状の環境に対して感謝できるようになる。

 

…筆者、透佳(スミカ)

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