成績アップには一つの法則がある。
それは「自分は○点を取れれば十分だな」と満足した瞬間、それが上限になるということだ。
私がこれまで見てきた限り、
子供という生き物は自分の目標達成に対して満足した場合
以後それに入り浸って手を抜くようになる。
早い話、お腹いっぱいになってしまうのだ。
これは全ての世界に共通するだろう。
「これでいい」と思ったところが、その人の限界である。
もうそこから伸びることはない。
いかに他人(例えば塾講師)が
「君はもっと高い目標を持っていい」
「君は100点を目指せる人間だよ」
と指摘したところで、
本人が「それでいい」と思っているのだからもう無理だ。
それに対して、
「○点ではまだ目標に届かない…」
「○点では内申点が上がらない…」
と現状に満足していない子はやはり強い。
努力が持続する。
こればかりは他人の力ではなく、自分でどうにかするしかない。
換言すれば、このハングリー精神さえ自前で用意してくれれば
あとの勉強のことはいくらでも丸投げできる。
だが、ハングリー精神だけは絶対に替えが効かないのだ。
「そこをなんとかするのが教育者じゃないんですか!」
という声が聞こえてきそうだが、
「『その気がない人間』をその気にさせる」のは
この世で最も難しいコミュニケーション技術である。
買う気の全くなかった人に買わせる。
観る気の全くなかった人に観させる。
手伝う気の全くなかった人に手伝わせる。
これを強制・脅しの類一切抜きで出来る塾講師がこの世にどれほどいるか。
これだけは断言してもいいが、
もし塾講師にそんな人間がいたら
その人は会社員なんてやってないでとっとと自分の塾を立ち上げた方がいい。
「勉強をやる気がない子をその気にさせてしまう」
というのは塾業界において最強のスキルだからだ。
それと同時に最も希少価値が高いスキルでもある。
実際にはそんな塾講師は伝説上の生き物だから、
塾に通っていてもまるでやる気のない生徒なんてごまんと溢れている。
ここから浮かび上がってくる大切な事実として、
学習塾は勉強に関しては保証してくれるが
「やる気」の保証は一切してくれない。
極端な話、塾側がどれだけ熱く指導しようが
生徒が一声「辞めます」と言ったらそれまでである。
これは私自身も塾講師の際によく使っていたフレーズだが、
勉強の中身のことはいくらでも学習塾に任せることができる。
だが、実際にやるかどうかはその子次第である。
塾にいる時間よりも塾にいない時間の方がどう考えても長い以上、
塾にいる時間だけ頑張っても全く意味がない。
結論を申し上げると、
現時点でやる気がない子を
「塾ならやる気を出してくれるはず…」
と塾に入れようとするのだけは止めた方がいい。
それだけは塾の範疇ではなく、家庭教育の範疇である。
…筆者、透佳(スミカ)
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