「だって、無趣味だって思われるの恥ずかしくない?」
今ドキの女子である甲はそう言った。
「『恥ずかしい』って何?何が恥ずかしいの?」
何言ってだ、という顔で乙が言い返した。
「だって、つまんない人だって思われるから…」
「え…別にそれでよくない?」
甲と乙はどうも根本的に話が噛み合わない。
「私からすれば、乙の方が意味が分からないよ。
無趣味だって思われるのがどうして嫌じゃないの?」
乙は間髪入れず言い放った。
「『無趣味はつまらない』って言ってるヤツが一番つまらないから」
甲はしばし沈黙した。
「趣味がない、ないし
『趣味は仕事です』『仕事が趣味です』という人を
つまらないなんて思うその発想がつまらなさ過ぎて
半径1キロ以内に近寄ってほしくない」
乙は今日もやはりストレートだった。
「じゃあ乙は、
そういう人が『つまらない』って思わないの?」
「全く」
甲も乙という生物に興味が出てきた。
「世の中には、
『いや、趣味っていうほどじゃないんですけど…』
っていう恐ろしい言葉がある」
「あぁね」
「こういう人が一番怖い」
甲はしずかにうなずく。
「人にわざわざアピールするために
趣味を選んでいる連中と比べると、
こういう100%自分のために趣味をやっている人は
堂に入っているクセしてそれをいちいちアピールしない」
「なるほど」
乙が甲に向かって面と力説するのは初めてかもしれない。
「そういう人はいい意味で
自分にしか興味がないから、
人に向かって『つまんない』とか言ってるヒマがあったら
自分の趣味に今日も没頭してる」
「ほお…」
「で、」
乙は甲を今一度ゆっくりと見つめる。
「そういう人を、『恥ずかしい』って思う?」
「いや…」
甲は静かに確信した。
「人のことを『恥ずかしい』って思う自分が恥ずかしい」
「そういう感性が大事なんだよ」
以後、甲は人前で噂話をしなくなった。
…筆者、スミカ(Rick)
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