ここでは海外留学における「洗濯」を例として取り上げたい。
留学先で学生寮やアパートに入ると、自分の服は自分で洗濯することになる。
寮やアパートは実家でもホテルでもないから当たり前と言えば当たり前だ。
だが、ここで必ず「これまで自分で洗濯機を触ったことがない人」が登場する。
脱いだ服を適当にそこら辺に置いておけば
あとは誰かが勝手に洗って畳んでしまっておいてくれるような環境で今まで育ってきたのだ。
それがいきなり一人で、しかも海外である。
洗剤は何を使って、どこで買ってくるのか。
お金がかかる場合(大体「クォーター」、つまり25セント硬貨)はどうやって調達するのか。
個人の家と違って着替える場所と洗濯機が置いてある場所は離れているから
そこまでどうやってまとめると重い服を持っていくのか。
ボタンは何を押して、何をネットに入れればいいのか。
干さなければならないもの(=乾燥機が使えないもの)があったらどこにどうやって干すのか。
洗濯(と乾燥)をし終わった服は棚のどこにどうやって整頓しておくか。
洗濯一つとっても、その人のこれまでの育ちと生活力がモロに露呈する。
これを経験するために海外留学に行くべきだというのは少し言い過ぎだが、
「一人で自分の身の回りのことを強制的にやらされる」
というのは海外留学の素晴らしい仕組みの一つである。
もう一つはゴミ捨てが良い例だろう。
学生寮に入っていた関係で他の留学生の部屋に入ることもそこそこあったのだが
ゴミ箱・ゴミ周りというのは本当にその人の性格が出る。
その辺で拾ってきたような袋ではなく、きちんと「ゴミ袋」を使っているか。
(余談としてアメリカの場合は香り付きのゴミ袋が売っているからそれがいい)
ゴミ箱はしっかりと上から蓋が閉められるものを買ってきているか。
(人によっては袋をそのまま床に置いたりぶら下げたりして使っていた)
ゴミが多くなってきたらキチンと自分で捨てに行っているか。
「今までゴミ出しなんて行ったことなかった」という人も含め、
こういうことも強制的に経験させてもらえるのが海外留学なのだ。
そして極め付けが、複数人部屋ではなく一人部屋になった場合である。
複数人部屋であれば、
「ゴミは○○担当」
「掃除は○○担当」とルームメイトで振り分けてしまえば
残りの人たちは逃げてしまうことが可能だ。
だが一人部屋ではこうはいかない。
ゴミは自分で捨てないと誰も代わりにやってくれないからたまっていく一方だし、
掃除も自分でしないと誰も代わりにやってくれないから汚くなっていく一方だ。
学生寮のスタッフは共用スペースは掃除してくれるが、個人の部屋まではいちいち入らない。
そんなことをやっていてはホテルになってしまうからだ。
だがここはホテルではなく、学生寮である。
アパートなら尚更他人が入るわけがない。
自分一人がやらなかったら、もう一生汚いままである。
そうなってしまえば、もう自分でやるしかないと腹を括ることができる。
こうして自分一人で生きていく力を上げていくのだ。
こうやって上がった生活力は、留学を終えて帰国したあとも必ず活きる。
…筆者、透佳(スミカ)
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