文化はどこか遠くにあるものではなく、ごく身近に転がっているものだという話をした。
その道に詳しい人から
「これはこういう文化ですよ」
と受け身で教えてもらうのも文化だが、
それと同じように
「これはこういう文化なんだな」
と自ら気付くのも文化であるということだ。
この気付く力を最大限に高めるには、やはり一人で行動するのがいい。
なぜなら人は大人数で行動すると仲間内に気を取られるからだ。
これは修学旅行の学生を思い浮かべてみればすぐに分かる。
修学旅行は大抵地元の名所や名物を巡るだろう。
その際、一人で静かな子は現地のスタッフの説明をちゃんと聞いているし
「これはこういうものなのだな」
と自分なりに思考を巡らすことができている。
これに対して、群れて騒いでいる連中はスタッフの説明など聞いていないし
目の前に広がっている文化そっちのけでお喋りをしてしまう。
こんな学生はあなたの同級生にも複数人いただろうが、
ここであなたはこういう連中を笑っている場合ではない。
人生で大切なのは他人ごとではなく自分ごとである。
せっかく外国に来ているのに、日本人同士で固まって集団行動する。
出てくる話題といえば別にここで話すこともないような
日本国内の芸能ネタや同級生の噂話ぐらいである。
せっかく目の前に偉人の銅像があるのに、
群れて騒いて自撮りに精を出している。
せっかく目の前に現地の農場があるのに、
仲間内でいつまでも喋って笑い合っている。
この人たちは、先程の群れて騒いでいる修学旅行生と何が違うのだろうか。
全くの同一人物である。
「でも海外なのに、一人で行動するのは危ないのでは?」
と言いたい気持ちは分からないでもない。
だがそれなら、一人で行動すると危ないような場所には
最初から行かなければいいだけの話だ。
そんな場所は外国のどこにいってもあるから、それは事前調査しておこう。
私の場合、ハワイとミシシッピをこれまで経験してきたが
現地のショッピングセンターを一人で練り歩くのが好きだった。
特にホノルルのアラモアナセンターなどに行ったことがある人は分かるだろうが、
アメリカのスーパーやショッピングセンターはとにかく広い。
アラモアナに至っては、どんなに早足で全ての店をスルーして歩いても最低1時間はかかる。
しかもあの辺は毎年地味に拡張工事を繰り返していて地図が変わるから尚更だ。
私が一人で歩くのが好きだったのは、
ショッピングセンターで一人で歩いていると
「現地で暮らす留学生」、または「現地民」として見られる確率が上がるからだ。
これが日本人同士で群がって日本語を話していれば、
はたからみれば完全に「日本人観光客」である。
あまり大きな声では言えないが、どの国でも
「観光客向け情報」「観光客向け価格」
というのは概してボッていることが多い。
別に定住しているわけでもないし、逃げ切れるからだ。
それに対して、
「現地の人向け情報」「現地民価格」
というのは概してボラない。
そこでボッてしまうとリピート客がいなくなってまずいからだ。
長い目で見れば複数回通う可能性があるのは観光客ではなく現地民だから、
店側としてはまず現地民を敵に回すわけにはいかないのだ。
そういう訳で、どうせなら「現地民」として見られた方が良い思いができる。
そのための第一歩は、颯爽と一人で行動することである。
…筆者、透佳(スミカ)
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