私が講師として教室で授業をしていると、たまにこう言ってくる生徒がいます。
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
よくよく考えればこれは極めて不思議な文章です。
「いいですか?」なので、相手に許可を求めています。
つまり日本語上はこちらが断ることが可能なわけです。
じゃあ私が嫌だと言ったら行かないのか、という話をしたら
その生徒はこう私にボヤいてくれました。
「学校では『授業中に席を立つな。お手洗いは休憩時間に済ませろ』と言われています」
ということです。
これは大問題です。
健康に悪いとかそういう問題ではありません。
立派な人権侵害なのです。
名門塾のマニュアルには、
「授業中にお手洗いに行きたい生徒はいかなる理由があろうとも絶対に止めない」
という一文があります。
本当はトイレの中でサボることが見え見えだとしても、止めません。
なぜなら頻尿の可能性があるからです。
トイレが近い体質なのかもしれません。
これは性格ではなく体質なので、どうしようもありません。
そういう健康問題についてやたら口に出すのはタブーです。
人前で「お前、ガンなんだってな」「心臓が悪いんだってな」と言っているのと同じです。
塾でこれをやったら恐らくその講師のクビが飛ぶどころか、会社全体の責任問題になります。
だからお手洗いには黙って行かせるべきなのです。
突然生徒がどこかに行ってしまったら講師も肝を冷やしてしまうので
「先生、お手洗いに行ってきます」
の一言ぐらいは必要でしょうが、これは許可ではなく単なる確認です。
これは水分補給も同じです。
特に塾慣れしていない生徒は、授業中の水分補給を我慢しようとするのです。
これも学校教育の弊害の一つです。
本来これも生命に関わることなので、先生や講師が止める権利はありません。
ここで「飲むな」と言うのは遠回しな殺人です。
水分補給は人間が生きていくことで欠かせないことの一つですから、当然です。
そのため少なくとも私の授業では、水分補給に関してとやかく言わないようにしています。
何も言わないと我慢する生徒が現れますから、
冒頭で「いつ飲んでもいいです。許可も要らないです」
としっかり確認しておく必要があるくらいです。
そしてたまに現れるのが、
「どんな飲み物だったらオッケーですか」と聞いてくる生徒です。
ダメな飲み物なんてあるのか、と私が聞いてみたら
普通は水とお茶、あとはスポドリぐらいしか許可されないんじゃないんですか、と言われました。
自分が飲みたいものぐらい自分で自由に決めろ、と感じました。
そんなところまで干渉するのはどう考えても人権侵害です。
どこの昭和だ、と思ってしまいました。
確かに、フタの閉まらない飲み物はこぼれる危険性があるので避けるべきですが
普通のペットボトルや水筒であれば何でも好きに飲めば良いでしょう。
中には「ジュースは禁止」にしている塾もあると聞きますが、論外です。
ジュースをお茶に変えたら成績が上がるのでしょうか。
そんなわけはありません。
講師の側が「オレたちの頃はそうだった」というのを同じように強制しているのです。
間違ってもこういう塾や学校とは関わってはいけませんし、
水分補給に関しては何も気を遣わないのがスタンダードであるべきです。
…筆者、透佳(スミカ)
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