学習塾が手っ取り早く生徒の成績を上げる方法の一つに、先取り学習がある。
学校の授業の進度より少し早く授業を進めることだ。
例えば学校が来月から不定詞に入るのなら、先回りして今月にやっておくという具合だ。
これなら学校の授業は「2周目」になるから、その分定着も深くなって当然だ。
…と言いたいところだが、私が塾で教えていた生徒は全員が全員そうではなかった。
確かに先取り学習をうまく活かして成績を伸ばしていた生徒もいたが、
先取り学習をしていない生徒とほぼ同じ成績になるどころか
むしろ先取りしていた方が成績が悪化していた生徒も少なくなかった。
こればかりは「そういう生徒もいる」で済ませるわけにはいかないから、私はその理由を分析した。
その結果、主な原因は2つあった。
先回りが油断に繋がっていたことと、ロクに復習をしていなかったことだ。
2つ目はまだ分かるが、1つ目はどういうことだろうか。
要は、「オレは先取りをしているから大丈夫」という慢心になっていたのだ。
中学生はまだ精神的に完全に成熟しているというわけではない。
完全に成熟していないということはどういうことかと言えば、
ちょっと放っておくとすぐにふんぞりかえってしまうのだ。
これは私も一次情報で数々目にしてきた。
「でも学校でこれをやるのはずいぶん先なんでしょう?」
と宿題をサボったり、塾に通っていない同級生を下に見たりしていた。
だから学校が追いつく頃にはその内容はすっかり忘れている割に
謎の慢心(自信?)だけはしっかり残っているから、
先取りなし・その一発できっちり吸収しようと集中して取り組んでいる生徒に
すぐに抜かされてしまうのだ。
こういう慢心生徒に個別で聞いてみると、
「先取りをするのは偉いことだ」と考えている節があった。
だから私はこういう生徒には
「先取りそれ自体は偉くともなんともない」
「学校の授業ぐらい余裕でついていけるぐらいでないと塾に通う意味がない」
といった話で釘を刺していたものだ。
そしてこの慢心・姿勢は2つ目の理由にも繋がる。
先取り学習に限らず、全ての学習は復習をしなければ定着しない。
復習の大切さは何度強調しても足りないぐらいだ。
塾でいえば、塾で行う単元確認テストの直しであったり
宿題の答え合わせ・それを元にしたノートへのメモなどがそれにあたるだろう。
ここでしっかり直し・復習に励んでいた生徒は先取りを大いに活かして飛躍していたが、
ここで直し・復習をサボる生徒は慢心度ばかり上昇して他はからっきしだった。
私が見てきた限りでは例外なく、
生徒ごとの直し・復習の進捗が、その生徒の成績に完璧に比例していた。
英語は復習という努力さえきっちりすれば、その分素直に伸びる科目なのだ。
復習はできる・できないの問題ではない。
ひたすらやるか・やらないかの問題である。
英語講師として私が感じたのは、
合計4回は同じことを学ばないとテストで使えるレベルにはならないということだ。
- 塾での初導入
- 学校での初導入
- 塾での復習の導入
- 塾の「テスト対策授業」での導入
この4回やれば十分、と言うつもりはない。
最低でも4回はやってほしい、という意味である。
中学生にとって「英文法」なんてのは
ほんの数年前までこの世に存在しなかった異文化のようなものだから、
これだけ回数が必要なのも無理もない。
この4回に加えて、
例えば家で自習したり模擬テストを受けたりすることで
ようやく生徒の理解は盤石になるのだ。
先ほど「英単語などの暗記モノは1日4回以上」という話をしたが、
これは英文法にも同じことが言えると思う。
「文法は1週間以上空けて4回学ぶことでようやく定着する」
塾に通う生徒ですらこうだったのだから、
塾に通っていない生徒はより多い回数必要なはずだ。
…筆者、透佳(スミカ)
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