どんな塾講師でも多かれ少なかれ、
「この子は真面目なタイプだからこうしよう」
「この子はちょっと問題があるタイプだからこうしよう」
というふうに自分なりに目の前の生徒をタイプ分けして指導している。
(意識的か無意識かは講師によるが)
「真面目か不真面目か」と2タイプに分けている講師もいた。
「出来が良いか悪いか」で分けている講師もいた。
私がこれまで出会ってきた講師は、
上のどちらかの分け方を使っていたことが多かった。
そこで私が考えたのは、
それらを両方使えばより正確なタイプ分けができるのではないかということだ。
数学で習うデカルト座標を思い出してもらいたい。
「X軸」「Y軸」「原点0」というアレである。
X軸、つまり横軸には「真面目に勉強しているか否か」を置く。
Y軸、つまり縦軸には「成績が良いか悪いか」を置く。
こうしてできたデカルト座標には、以下4つのタイプが生まれる。
- 真面目に勉強をしていて、成績が良い
- 真面目に勉強をしていなくて、成績が良い
- 真面目に勉強をしていなくて、成績が悪い
- 真面目に勉強をしていて、成績が悪い
私は上の4タイプをそれぞれこう名付けていた。
- 優等生タイプ(真面目さ○、成績○)
- 天才タイプ(真面目さ×、成績○)
- 問題児タイプ(真面目さ×、成績×)
- プロスペクトタイプ(真面目さ○、成績×)
私が知る限り
1と2、3と4を一緒くたに考えてしまう講師はとても多かった。
要はその生徒の目に見える数字・結果しか見ていないのである。
だが実際には
優等生タイプと天才タイプに同じ指導をしてはいけないし、
問題児タイプとプロスペクトタイプに同じ指導をするのはもっといけない。
よってこの4タイプは全て分けて考える必要があるのだ。
ここではそれぞれのタイプ別の指導法を紹介しよう。
まず1だが、これは意外かもしれないが
私が教えていて一番怖かったのはこの優等生タイプだった。
このタイプは一生懸命勉強している。
そして実際に結果を出しているし、そのための勉強に徹している。
自制心もあるし、まさに自他ともに認める優等生である。
それだけに、自身に求める基準も高いが指導に求める基準も高い。
少しでも講師側が間違ったことを言おうものなら
「はあ?何コイツこんなので間違えてんの」
「もしかしたら俺の方が詳しいんじゃねえか」
と一切の悪気なく自然に思ってしまうのがこのタイプなのだ。
この業界では「ダメだった生徒を育て上げるのが尊い」という風潮があるが、
私は優等生を優等生として最後まで導くのが一番大変なことだと思っている。
それが講師として一番高い知識・経験・技術を求められるからだ。
次に2だが、これは正直あまり心配ない。
最後の受験本番まで天才タイプで完走してしまう本物の天才も
割合で言えば数%は存在する。
それはどの分野にも本物の天才が存在するのと同じだ。
だが、私が見てきた限りでは
「なんか点数取れるから」と勉強をサボる生徒は9割方問題児に堕ちる。
(もちろん「これではまずい」と気付いて優等生に転身する子もいるが)
言ってしまえば、学校のテストで高得点を取るのはさほど難しいことではない。
受験に比べれば遥かに狭い範囲からしか出ず、かつその範囲を逸脱しないからだ。
「ノー勉でもいけた」という子が出るのはこの為で、
単に範囲が狭くかつ全て予告されているからである。
だがその手の子は模試などの「実力テスト」になると途端にもろくなる。
これまでの復習をしないでいきなり高い偏差値が取れるのは本物の天才だけだからだ。
本物の天才は邪魔さえしなければあとは通常通り指導すれば良いのだが、
「偽物の天才」は遅かれ早かれ次の3に移る。
という訳で「問題児」に属する生徒は想像以上に多くなる。
「そりゃあ勉強していないから当然テスト取れないよね」という子だ。
これは塾講師としては爆弾発言かもしれないが、
私はこのタイプの子は自分から気付かない限り完全放置することにしている。
人から「やれ!」と言われてやるのは偽物のやる気であり、
自分から「やる」と決心してやるのが本物のやる気だからである。
1日・2日の問題ならともかく、受験はそこそこの長期戦だ。
毎日偽物のやる気でごまかすには受験勉強は長すぎる。
「やれ!」とこちらが言って実際にやってくれるのはせいぜい1週間が限界である。
よってこのタイプの子に対する唯一の処方箋は、
徹底的に挫折を味わってもらった上で自ら「やります」と態度を改めてもらうことだ。
繰り返すが、「自ら」というのが極めて大切だ。
そして最後に4だが、このタイプも安心してよい。
(ちなみにプロスペクトというのはプロスポーツにおいて
「将来期待の若手」という意味で使われる言葉である)
「頑張っているけど中々報われない」という子を救うために学習塾があるからだ。
こういう生徒は初歩や基礎に問題があるということは先述の通りだ。
こちらの指導のもとで引き続き頑張れば必ず報われるようになる。
このように、
生徒は4タイプごとに適切な指導方法が全く異なる。
それはつまり、子供がどのタイプに現在属しているかを見極めた上で
最適な塾に入れてあげる必要があるということだ。
そして講師は、生徒がこの4タイプのどこに属するかを素早く見極めて
適切な指導を行うことで結果が出やすくなる。
…筆者、透佳(スミカ)
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