英会話教室の世界にいた頃に、こんな話を聞いたことがある。
経営上一番大切なのは、キャッシュポイントに集中することである
ということだ。
キャッシュポイントというのは、
実際に金銭のやりとりが発生するタイミングのことだ。
例えば英会話教室なら、
新規契約を結んだお客様から受講料金が教室に振り込まれるその瞬間だ。
まずはお金を手に入れないと、会社としては絶対に存続できない。
それは至極当たり前の話であり、会社経営上はそれが模範解答である。
だがお金を払う側のお客様は、
今目の前の会社の経営状態などどうでもいい。
例えばあなたはコンビニに入るときに、
「このコンビニの経営状態は…」
などといちいち気にするだろうか。
そんなことはないだろう。
せいぜい、
「私が使っている今この間は変なことにならないでね」というぐらいだ。
では気になることといえば、
自分がお金を払った商品が「実際にどうだった」ということだけだ。
これしか気にしない・ならないと言っても過言ではないだろう。
先ほどの英会話教室で言えば、
お客様にとって大切なのは「お金を払った『後』のサービス」なのだ。
これもお客様の立場から考えれば至極当たり前である。
「お金を払ったからはい終わり」ということは絶対にない。
そこで実際に受けたサービスが期待以上だったら感動してリピート・紹介するし、
期待以下だったら失望して二度とその店に行かずに周囲に悪評を拡散させる。
私はこれまで英会話教室・学習塾の2つを経験してきたが、
この感覚が分からない・理解できない人が業界内に多すぎる。
既存のお客様(所属生徒)をいくらなんでもないがしろにしすぎなのだ。
以下は私が直接目にしてきた例だが、
- 新規のお客様をまず優先して予定に入れる。既存はその後
- 授業をしている最中に、新規のお客様対応のために席を外す
- 新規のお客様に対する仕事の質を上げるために、既存顧客に割く時間を減らす
こんなことは日常茶飯事だった。
「人手が足りない」というのは言い訳であり、
つべこべいわずにさっさと人手を増やさない運営側の責任である。
学習塾に関して申し上げると、
「授業中に講師が席を外す」というのは
相当まずい行為であるが塾によっては日常的に行われている。
アポ無しで突然来た新規のお客様対応なんてのはまだマシな方で、
酷い方になると授業中に新規向けの営業電話をかけている。
(繰り返すが、業界外から見れば信じられない行為である)
これは学習塾のみならず全ての業界でそうだが、
「何よりも新規のお客様・新規契約が第一優先業務」というのは極めて危険な兆候である。
それはつまり、
「もうお金を払ったお前よりも、これからお金を払ってくれるお客様の方が大切」
と既存顧客に向けて喧嘩を売っているようなものだ。
例えばあなたが新規入会の説明で塾を訪れたとして、
- 対応している講師以外に人が少ない、ないしゼロ
(人手が少なく、授業中に電話がかかってきたら講師自ら対応する可能性が高い) - そこの在籍生がその講師に質問したそうな様子でうろうろしている
- 「紹介キャンペーン」のポスターがそこらじゅうに貼ってある
こんな様子が見えたらそれは危険信号である。
そういう塾はあなたが入会した瞬間に
「もうお金を払ったからよし」と二の次にされる可能性が高い。
それどころか、
激しいところになると入塾後に
「どうして友達を連れてこないの?」
「もっともっと紹介してよ!」
と責められてしまう可能性すらある(念のため、これは実話だ)。
そんな塾だけは絶対に避けよう。
…筆者、透佳(スミカ)
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