「ブランディング」experienced。

ノンフィクション – experienced

「でも行動経済学だか心理学とかだと、
固有名詞は忘れたけど
人はハイブランドの商品を自腹で買ったときには
『それを絶対に良いものだと思い込もうとする
みたいな傾向があるみたいだね」

「それは確か…
ヴェブレン効果って名前がついてなかったかな」

「あぁ、多分それだわ。
同じ商品を『絶対に買う』と仮定したとき、
低価格よりも高価格のものの方を
より価値があると『思い込む』みたいな」

甲は確か大学で
経済学・心理学をかじっていたと思う。

「まあ、それは人間の性だろうね。
『これだけお金を払ったのに、これだけ…!?』
みたいな気持ちだけは絶対に味わいたくないからね」

「そうそう。
だから究極、ブランディングって
『価格を釣り上げること』一つだけなんだよね。
もちろん、有名人を餌にするとかもあるけど」

「こら笑。餌って言わない笑」

無論、広告・宣伝のことである。

「そういえば乙、
昔勤めてた会社のマーケ部で
当時の上司がこんなことを教えてくれてね」

「ほう、どんなよ」

「過剰に見かけに気を使うモノや人は気をつけろ。
それは裏で後ろめたいことをやっているか、
そもそも中身がたいしたことがない証拠だ…って」

「まあ、身も蓋もない言い方をすれば
広告を打たないと売れないどころか認知もされないから
そうやって広告を打つんだからねえ。
最初から売れれば広告なんて大枚はたいて打つ必要ないわけで」

ちなみに甲と乙、共に「アンチ広告」である。

「そうだね。
基本的にブランドとかマーケティングって、
提供する側が『こうですよ』ってのが答えじゃなくて
大衆が『こうですね』って思ったのが全てだからね」

「コミュニケーションの原則だね。
伝わったことが全て…というか」

「うん。
だから、厳密に言えば
『ブランディング』なんて言葉を使ってるけど
それができるのは僕ら側じゃなくて顧客側なんだよ。
顧客がブランドを作る。それが正しい。

お金を払う側に最終決定権があるのは当然だろ」

甲はマーケティングのプロだが、
またプロとしての限界も熟知していた。

 

…筆者、スミカ(Rick)

「ブランディング。」

【追伸】
畢竟、
全ての仕事はマーケティングに通ずるが
「マーケティング」という仕事は存在しない。

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