自分の第一志望の過去問はぜひ手元に持っておくべきだというのは先述の通りです。
ですがこうして毎年受験指導にあたっていると、いわゆる「過去問マニア」に出会います。
生徒がそうなってしまう場合もありますが、実は親御さんの方がなる割合は高いです。
「ウチで何もやっていないと不安だから」
ということで、そこら中の書店から過去問を買ってきてしまうのです。
今日の本屋では、その地域の公立入試から私立入試まで一通りの過去問が売っています。
その中から一つだけ狙い撃ちして買う分には問題ないのですが、問題はまとめ買いです。
子供もわざわざ買ってもらった以上、読まないわけにはいきません。
(これをガン無視して押し入れに全部突っ込んでおける鋼メンタルの生徒も稀にいますが…)
するとどうなるでしょうか。
消化不良に陥るのです。
過去問を一年分やりきるというのは相当なエネルギーが必要です。
時間を測って解いて、丸付けをして、分析をして、単語等は全て調べます。
1日にまとめて10個も20個もまとめてやるのは無理です。
ここを理解していないのは子供よりも、むしろ親御さんの方なのです。
子供は実際にやっていますから、苦労を知っています。
下手に入試テクを聞きかじった親御さんが
「過去問はできるだけ沢山やらせておいた方がいい」
ということでガンガン子供に買って与えてしまうのです。
これが塾に通う生徒だった場合、目も当てられない事態になります。
学校の宿題、塾の宿題に加えて家の宿題が降りかかってきます。
それぞれの所からプレッシャーがかかるわけです。
どうなるかは予想がつくでしょう。
精神的な拠り所・オアシスを失った生徒はガクンと成績が落ちます。
これを「あんなにやらせているのにどうして…」と首を傾げている親御さんがいます。
犯人は親御さんです。
自覚がないのです。
むしろ自分はこんなにも貢献していると思っているのです。
貢献していると思っているので、受験が近づくにつれて益々エスカレートします。
「アンタの今の偏差値はこれくらいだから、今日はこの過去問を解いた方がいい」
「○○高校の入試は、アンタが受ける○○高校の形式に似ているから解きなさい」
これではまるで塾講師です。
もちろん塾講師はプロですから、それに比べると素人分析の精度は大幅に下がります。
何よりもこれによって子供のやる気が削がれるのが最悪なのです。
今までこんな例は片手では足りないぐらい見てきました。
こういった親御さんと面談をすると面倒なことになります。
「塾ではしっかりやっているんですか」などと言い出すのです。
もう精一杯頑張っているのに、もっともっと頑張りを要求するのです。
これでは子供が潰れてしまうのも時間の問題です。
全ては塾の真似事をして、過去問マニアになってしまったことが原因なのです。
今回は親御さんのパターンを紹介しましたが、これは生徒も同じです。
先述の「停滞期」につい不安になって、受けるつもりのない学校の過去問を買ってきてしまう生徒がいます。
それを解くことによって不安を少しでも和らげようとするのです。
ですがそれは、ガンや骨折といった重い病気を自分で治療しようとしているようなものです。
任せるべきところは、しっかりプロに任せましょう。
他ならぬ塾講師という生き物が筋金入りの「過去問マニア」なのですから。
…筆者、透佳(スミカ)
コメント