「私、英語が話せるようになりたいから留学を考えているんです」
こういった相談に数えきれないほど乗ってきました。
一貫して私が言ってきたのは、
「そのぐらいの目的なら、間違っても海外留学なんてしない方がいい」
ということです。
コスト・リスクに対してのリターンが小さすぎるのです。
一般向け英会話教材というものがほとんどなかった半世紀前の日本ならともかく、
今の日本なら教材はいくらでも選ぶことができます。
話す環境も自由に選んだり作ったりすることができます。
学習法を教えるブログやSNS・スクール・各種有料サービスも溢れています。
ネット動画・ストリーミング・オンライン英会話など
ひと昔前では考えられなかった技術も当たり前になりつつあります。
これだけ恵まれた環境があるのに、「日本だと英会話が学べない」と考えるのは甘えです。
現に、「留学経験・海外経験はゼロですが英語が話せるようになりました」という人が続々登場しています。
決して「選ばれた天才にしかできない」というレベルではないということです。
もし英語の習得難易度がそれほどまでに高ければ、ここまで世界中には浸透していません。
ここで必ず、「でも『英語漬け』の環境の方がいいって聞きました!」という人が登場します。
日本だとどうしても日本語があるから、英語しか通じない環境に身を置くことで強制的に英語を話そう…という考えです。
第二言語習得論(SLA)ではイマージョン(immersion)と呼ばれます。
このイマージョンですが、第二言語習得においては実はあまり効率が良いとはいえないというのが最新の知見です。
早い話、「何を言っているか全く分からない」という環境にいきなり飛び込んでも意味がないのです。
すでに初歩・基礎が備わっている人が「では次は日本語を絶対に使わない・使えない決意をしましょう」ということで行う手段の一つがイマージョンです。
「海外に行けば英語が話せるようになる」というのはあまりにも安直です。
しかも単語や文法といった学習は全てすっ飛ばすことになるので、「伝わるんだけどキレイじゃない」ストリートの英会話が身についてしまいます。
間違ってもビジネスの場ではこんな英語は使えません。
一度身についてしまったものを矯正するのは、ゼロから学ぶよりも倍大変です。
そしてもう一つ。
海外留学とは、英語を「使って」日本では学べないことを学ぶ場です。
英語それ自体を学ぶのなら、何も大枚はたいて海外になんて行かなくていいのです。
…筆者、透佳(スミカ)
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